北極域永久凍土生態系実習
新谷 研人
北海道大学工学院北方圏環境政策工学専攻修士課程1年
参加フィールドワーク 北極域永久凍土生態系実習<場所ロシア・ヤクーツク>
平成29年8月6日~8月18日
平成29年度基礎科目
私は8月7日から17日にかけて、ロシア連邦に属するサハ共和国の首都ヤクーツクにて現地の学生と北極圏永久凍土の生態系に関して調査を行ってきました。
私はこのプログラムに参加する以前では、大学の講義の一環等で海外に行ったことはありませんでした。しかしながら、大学院に進み研究・学習を行う中で、日本人にはない視点や考え方を持つ海外の大学の学生と交流することの重要性を感じました。また、私は生まれも育ちも北海道であり、距離的にも文化的にも近い関係にあるロシアに行き、そこで学ぶ経験は有意義なものになるだろうと考え、このプログラムに参加することを決めました。
参加を決めた当初はロシアについての知識があまりなく、よく日本で報道されているような歴史的・政治的な情報からあまりよい印象をもてていませんでした。また、事前にオリエンテーションで現地の様子を伝えられてはいたものの、訪れる地域がどのようなところで、現地の人々がどのような生活をしているのかがイメージできず、多少の不安を抱えていました。
ヤクーツクへは東京から出発し、ウラジオストクを経由して行きました。それぞれのトランジットの時間が長く、距離的には近いのですがずいぶんと離れたところに向かうように感じました。ウラジオストクの空港では、ロシアに入ってから初めて食事をしました。“シャワルマ”と呼ばれるケバブのようなもので、とても美味しく日本人の口に合う味付けでした。
ヤクーツクについてからの数日間は現地の大学の寮で過ごし、現地の大学の教授陣による永久凍土に関してのレクチャーを受けました。現地は気候的には昼間は暖かく、札幌と大きく変わらないように感じました。ただ、道路には砂埃が少しまっていたり、水道水も少しにごっていたりしていてインフラ的にはまだ発展途上のように感じました。町並みはシンプルな作りで集合住宅が多いように見られました。余計に視界を煩わすものがない分見通しがよく、気分よくロシアの町並みを見て回ることができました。
中にはソーセージやハムなどが入っている。ファストフード的な感覚で食べられる。おいしい。
大きな広告などはあるが基本的にはシンプルで空が開けていて爽快だった。多くの日本車が走っていた。トヨタがやっぱり多かった。
日本よりもかなり安く飲み食いができる!(半額以下!)
ロシアのスープ料理はとにかくうまかった!ほかにも馬肉や凍らせた魚の刺身などもあって全部おいしかった!
中はおしゃれな装飾がされていてきれいな歌が歌われていた
寮などの大学の施設が周辺にあったが、かなり大きな大学だった。中は結構きれいだった。
永久凍土内に掘られた洞窟に所狭しに氷のオブジェが並べられていた。中はめちゃくちゃ寒い。でも楽しかった!
永久凍土の中で冷凍保存されているところを見つかったマンモスのことがいろいろ紹介されている。
ヤクーツクはダイヤモンドの原産地でこれ以外にもそのダイヤモンドを紹介したミュージアムにも行った。
なんと2000円でダイヤが買える!!
あとは伝統楽器である、口に当てて震わせることで音を出すホムスという楽器のミュージアムにも行った。
そこで実際に演奏してもらったが意外と迫力があって面白かった。
数日間大学でレクチャーを受けた後は、実際に永久凍土の生態系を調べるためにヤクーツクの森の中に向かい、そこにあったロッジのようなところで生活しました。昼間はいくつかのグループに分かれて、永久凍土地帯において広範囲にわたり分布している植物であるマツやカラマツの生態系を調べたり、土壌の様子を調べたりして、夜は毎晩ロシアや中国、インド、日本の文化を紹介したパーティをおのおのの学生が企画し、それを楽しみました。宿泊したところにはお風呂はありませんでしたが、その代わり木の小屋でできたサウナがあり、火照った体に冷たい水を浴びて汗を流しました。最高に気持ちよかったです。すべてが日本では味わうことのできない新鮮な体験で、大自然の中での生活を存分に楽しむことができました。調査自体は、初めは自分の専門分野とは全く異なっていたので困惑する部分もありましたが、レクチャーや実際の作業を通して生態系の特徴やメカニズムをある程度までは理解できるようになりました。成果の発表はとても科学的であり、帰ってからも自分の研究等で使うことのできるアドバイスもいただきました。このように講義としてしっかりとした調査・研究の課題がある中、楽しみもたくさんあり本当に参加してよかったと思えるプログラムでした。
道中で地形や植物の説明をしながらハイキングをした
ロシア人が食べられる木の実をたくさん教えてくれてそれを一緒につまみ食いしながら歩いた。
特にスープとピロシキはうまかった!
毎日おいしい食事をおなかいっぱい食べられて幸せでした 笑
ちょっとおしゃれな外観で全部自然の材料が使われている。
中は意外と広くてわきにあるスペースに寝袋を広げて寝た。男は毎回の食事もここで食べた。
生活してみると意外と快適だった!
近くには馬がたくさんいて、一部は食用らしい。
森を歩いていておおきな糞を見つけて何かと思ったら馬の糞でした。
土壌を永久凍土に達するまで掘って、土壌の水分量と温度を測っているところ。
永久凍土はやはり空気が冷たくひんやりとしていた。
ほかにも葉っぱの光合成量を測ったり、木の成長具合を幹の高さや太さから測定したり、いくつかのテーマでグループに分かれて作業をした。
この日はロシア人が伝統的な歌をギターの音色とともに歌ってくれた。
ほかにもジェスチャーゲームをしたり、毎晩退屈せず楽しかった!
スピーカーから音楽を流し、クラブみたいにして騒いだりもした! 何時間も狂ったように踊りまくってた。
日本人の企画ではだるまさんが転んだとスイカ割をした。 スイカ割りはめちゃめちゃうけてた。
ロシアのスイカは日本とそこまで変わらず普通においしかった。
さて、今回このプログラムを通してもっとも学んだことを上げたいと思います。それは自分の無知さです。参加する以前はテレビやネットで見聞きする情報からあまりよい印象を抱けませんでしたが、参加後にはその考えが180度変わりました。確かにインフラなどはまだ未成熟で改善すべき点はあるかもしれませんが、それでもなれれば許容できるもので、食事も日本人の味覚に合っていて、むしろロシアに来る人皆来れば必ず気に入るのではないかと思うほどでした。現地の人も話してみれば気さくで優しい人たちばかりで森の中では昼夜問わず一緒にふざけあったりしていました。私はこのことから私たち日本人は近い存在なのにロシアのことをまだ全然理解できていないと気づきました。逆にロシアの人たちは日本のことをその文化も含めてよく知っていて、ロシアには日本のことを紹介する博物館もあるそうです。しかしながらロシアから日本にわたるにはビザや物価などの関係で簡単ではないそうです。ロシアは日本にはない天然ガスのようなエネルギーを豊富に持ち、将来的にその関係が重要になってくる相手だと思われます。日本側もロシアに足りない技術等を提供したりしてお互いが支えあえるいいパートナーになれるのではないかと思います。まずはお互いにお互いを知ることから始めて、それが距離を縮める一助になるのではないかと思います。特に、私は味覚が日本人と近いのは観光の側面から歩み寄りの大きなきっかけになると思いました。
今回のプログラムに参加して北海道というロシアに比較的近い地域に住んでいるのにもかかわらず、ロシアのことをよくわかっていない現状を思い知らされました。しかしここでそのことを知れたのは大変幸運であったと思いました。私は漠然とはしていますが将来的には北海道で地域のために貢献したいと考えていて、今からロシアとの関係性について考えるのは大変いい機会になったと思います。また、自分以外にも食事や文化、歴史など含めてロシアのいいところをもっと知ってほしいと思います。このプログラムは知るという意味では本当にいい機会になると思うので、もし少しでも興味を持った人がいれば遠慮せずに思い切って参加してみてほしいと思います。