参加学生体験談

2017年度 NJE3

北極域永久凍土生態系実習

白鳥 良子

北海道大学工学院北方圏環境政策工学専攻修士課程1年

参加フィールドワーク 北極域永久凍土生態系実習 <ロシア・ヤクーツク>
平成29年8月6日~8月18日
平成29年度基礎科目

・参加を希望した動機

永久凍土という北極域に広がり日本にあまり馴染みがなく、人間の生活環境に影響を及ぼしそうで且つ繊細そうなその存在に強い魅力を感じていました。私自身も研究として北方圏に関する環境サイクルを考慮した構造物の検討をテーマとしているので、実際に現象観測が出来ると知り、本実習の参加を決意しました。

・実習内容について

本実習の主な内容は、8月6日から26日までの約3週間ヤクーツクに滞在し、講義・グループに分かれてのフィールドワーク・ミニ研究プロジェクトの成果発表を行うものでした。講義は北極域に広がる永久凍土上に成立する森林の成り立ちや生態系における永久凍土の役割など北極域生態系の基礎的知識を学びました。フィールドワークは、約1週間寒冷圏生物学研究所Spasskaya Pad実験林に滞在し5人1組で4班に分かれ、それぞれの課題について観測を行いました。私たちの班は、針葉樹林のカラマツ林とマツ林それぞれで土壌から放出される二酸化炭素を観測し、それらが温度や湿度、そこに生えている植物の量との関係性を立証するというものでした。最終日は観測したデータをもとに、まとめた結果を他の班と英語で発表しあいました。

土壌断面:植物の根の張る層はとても薄い
Spasskaya Padでの食事:ロシア料理のボルシチ(右)にピロシキ(左奥)、パスタが多かったがこの日はご飯(左)

・学習成果について

永久凍土の上層には夏季に融解する活動層が存在し、植物は降水量が少ない乾燥する地域でもこの活動層から水の供給を得ています。また、森林があることで永久凍土が熱から守られていることを知り、永久凍土と森林の相互関係について理解することが出来ました。また、実験林では地盤が粘土と砂で植生が変わってくることも直接観察でき、とても興味深かったです。レナ川東側のタリークの存在する地域では、降水と永久凍土が融解した水分が55年の年月をかけて地表面から20~100m地下にある6億年前のカンブリア時代の石灰岩上を通り、湧水として出てくるのを見たときは感動しました。

グループに分かれて成果発表の準備をする際、メンバー内でデータや結果をまとめる議論を何度か重ねていく中で研究プロジェクトの内容の理解だけでなくメンバーのバックグラウンドによって違う視点から物事を捉えることや、普段考えない分野を考えるきっかけになり、より一層理解が深まりました。

観測の様子
凍上現象

・ロシアでの生活,日本との違い,気候について

北方圏ならではの生活環境として一番実感したことは、永久凍土を考慮した建造物の構築です。永久凍土の凍結融解により、地盤が歪み建物が傾くことから地表面からコンクリートの杭を打ち、その上に建物を施工していました。永久凍土を考慮した建造物は建物だけではありません。ヤクーツクでは、上水道が地上のパイプラインを通してつながっているので、パイプラインが街全体を網羅しています。

建物は基本的に冬季に冷気が通るように高床式となっている
大学のキャンパスを横断する水やお湯供給のためのパイプライン

ヤクーツクの街中は英語も通じない上に、私たちはロシア語に関して読めない、聞けない話せない状態でしたので、レストラン等で写真のないメニュー表から注文する時は、値段で量を想像し何も分からないまま店員さんに指さしで注文することもしばしばありました。食べ物に関しては何も不自由はありません。物価は日本よりも安く、カフェやレストランなどお店もたくさんあります。

日本料理屋さんのお寿司:わさびの量が信じられないほど多い
レストランの食事も日本と大差はない

今回訪れたヤクーツクは降水量が年間で約230mmとかなり少ない地域で、非常に乾燥していました。白夜でしたので、滞在中は21~22時くらいまで明るく自身が緯度の高いところに来ているのだと実感できました。しかしいくら緯度が高いからといっても日が出ている間は気温が高く汗をかく日も多々ありました。寒暖差が大きく気温の低い日はトレーナーが必要なくらい寒く感じます。

Permafrost Kingdomにて

また、Spasskaya Padでも街中でも気を付けていたのが蚊やモシュカ(蚊よりも小さい虫)でした。気温の低い日は全くいませんが、暖かい日は朝から晩までかなりの数の虫がまとわりついて来るので、外出時の虫除けと痒み止めの塗り薬は欠かせませんでした。

虫除けネット付きの帽子をかぶり実験林で永久凍土の冷気を感じる(深度180cm)

・本実習を活かして

今回実習で学んだ専門的な話から逸れますが、日本について自ら発信していきたいです。ロシア側の学生や先生方と話していて感じたのは、日本に関心のある方が多いということでした。それと同時に日本についてうまく伝えられない自分がいました。もっと自国に関しての知識を増やし、それを国内外に発信して情報を共有したいと強く思うようになりました。そして伝える手段として必要なのは英語での会話力です。相手が理解しやすいような表現・発音をこれからも日々勉強し続け、国内でも積極的に英語を使用する場を求め自分の英語力を磨いていきます。

ヤクーチアンブルー

・まとめ

実は、予定通りに飛行機が来ず、実習終了後3日遅れでの帰国となりました。こういうことはロシアでは日常茶飯事のようです。困りますね。滞在先の大学の寮のシャワーもお湯はおろか水がきちんと出る日も珍しく、ほぼ毎日冷たい泥水で身体を洗っていました。ゴミの分別の習慣もないようで、燃えるごみも燃えないごみもプラスチックどころかガラスやペットボトル、全て同じゴミ箱に捨てます。タバコの吸い殻入れも街中では5m間隔に置かれていて日本とは全く違う環境でした。外から見た日本は印象も変わりましたし、両国の良いところも悪いところも発見でき、理解の深まった素晴らしい体験でした。