ヤクーツク実習
圖師 侑哉
Hokkaido University, Graduate School of Global Food Resources, Master course 1
Period of time: 4 August, 2019 ~ 14 August, 2019
Host University :North-Eastern Federal University
2019年度基礎科目
私は修士課程でシベリア域の森林火災が植生変化と森林炭素循環に与える影響のモデル化について研究しており,モデルの対象地域であるヤクーツクでフィールド調査や,生の永久凍土に触れることが出来ると伺い,8/4-8/14の日程で北極域永久凍土生態系実習に参加した。出発早々,成田→ウラジオストクの飛行機が森林火災の影響で4時間遅れ,ホテルには深夜0時の到着となった。研究で森林火災を扱っており,本当に極東では山火事が多発しているのだなと思うと同時に,今回の実習に縁を感じた。
2日目,ウラジオストクでは市内を散策することが出来,ウラジオストク駅やニコライ二世凱旋門,潜水艦C-56博物館,中央広場などを見て回った。中央広場に建てられた革命戦士の像は日本の方角を向いているらしい。
革命戦士の像
1917年~1922年のロシア革命で活躍したウラジオストクの英雄戦士を称えたもの。
この日の夕方,ウラジオストクから2時間半かけてヤクーツクに飛んだ。ヤクーツク市内の気温は20℃前後で快適だったが,年間平均降水量が240㎜と少なく乾燥している為,砂埃がひどく何処も視界が霞んで見えた。また,街では英語がほとんど通じない為,レストランで注文する時など大変苦労した。
滞在3日目と4日目は北東連邦大学(NEFU)にて北大側,ロシア側の先生の講義を受けた。講義はシベリアの永久凍土や炭素循環に関するものからサハ共和国の歴史と文化についてのお話もあり,ヤクーツクの生態系だけでなく歴史についても学ぶことが出来た。4日目の午後にNEFUを出発し,今回の実習の調査地であるスパスカヤパッドステーションに向かった。山の麓までバスで行き,そこからスパスカヤパッドまではハイキングをしながらレクチャーを受けた。山中には森林火災や大雨による洪水の後の地形が残っており,そのような攪乱が森林生態系に与える影響の大きさを目の当たりにした。
森林火災の跡
下層植生が無くなり,焼け焦げた樹幹が倒れている。
滞在5日目~8日目はスパスカヤパッドにてNEFUの学生と一緒にフィールドワークを中心とした実習を行った。実習では4つのグループに分かれ,カラマツやカンバ,ハンノキ,下層植生のLAI(葉面積指数)を測るために,それぞれ木本は木を切り草本はある区画内の草を全て刈り取った後,葉を枝から取り分け,スキャナーを用いて葉面積を測定した。他にも,永久凍土に達するまで穴を掘りカラマツの根が活動層中でどのような役割を担っているのか調べたりした。
深さ約120㎝の穴を掘り永久凍土に触れた。この日は気温が低かったため,穴の中に入ってもあまり寒く感じなかったが,土は粘土状になっており,ひんやりして冷たかった。
スパスカヤパッドにはバーニャというサウナのような蒸し風呂があり,池の水を沸かしたお湯とそのままの池の水を混ぜることにより微温湯を作り,身体を洗う仕組みになっていた。そこではNEFU修士1年のアレクセイにヴェーニクと呼ばれる白樺や楓から作られた葉っぱの束で身体を叩くことで健康に良い効果があると教えてもらい全身叩かれた。またアレクセイには,モルスというコケモモの実から作るジュースを日本人学生のために作ってくれるなど,ロシアの文化を沢山教えてもらい大変お世話になった。
スパスカヤパッド最終日前日の夜には日本側と中国(中国出身の留学生),ロシア側それぞれの文化紹介があり,日本からは手押し相撲とスイカ割り,中国人学生からは人狼ゲーム,ロシアからは伝統衣装のサラファンや木製の棒やサイコロを使った遊びなどの紹介があった。どの遊びも非常に盛り上がり夜中まで続いた文化紹介はクラシックギターが特技の日本人学生二人の演奏で閉幕した。
9日目,最終日はNEFUに戻り,データ解析やスライド作りといった発表準備の後,スパスカヤパッドでの実習の調査報告をグループ毎に行った。私の班は中国とロシアの学生の3人だったので英語でディスカッションする機会が多く,意見を上手く伝えられないこともあったが,色々な視点から結果を考察することに繋がり,最終的には有意義な発表をすることが出来た。
またNEFUに戻ってからは,マンモス博物館や氷の彫刻が数多く並んでいる永久凍土王国,サハ共和国のソ連時代の物が展示されているヤクーツク歴史文化博物館を見学した。最終日は夜のフェアウェルパーティーまで市内見物の時間があり,NEFUの学生と共にヤクーツク市内を散策した。
Peter Beketovの記念碑の前で撮影。ヤクーツクのロシア国家への入国375周年を記念した記念碑。
ヤクーツク実習を通して専門分野への理解を深められたのと同時に,日本では味わうことのない貴重な体験を沢山することが出来た。今度はロシアの学生が札幌に来て一緒に講義を受けるが,自分と同じ様に日本の文化を沢山経験してもらえるよう何か手助けが出来ればと思う。