北極圏での環境観測実習
藤井 瑞季
北海道大学歯学研究科口腔医学専攻博士課程2年
参加フィールドワーク 北極圏での環境観測実習<ヤクーツク>
平成28年7月31日~8月12日
平成28年度基礎科目
派遣プログラムの内容について
講義、フィールドワーク、ミニリサーチ発表が主なプログラム内容であった。
講義については、永久凍土にまつわる基礎から、永久凍土地域の土壌や植生、地形など時にかなり専門的な内容まで学習した。講義中は参加者からの自発的な質疑応答があり、活発な意見交換が行われた。
フィールドワークでは、永久凍土に関する研究がなされているSpasskaya Padにて周辺の植生や土壌を利用したミニリサーチプロジェクトを行った。各班日本人3名に対しロシア人1人の割合で
それぞれの班が異なるテーマで進めた。実際に森へ足を運び、データを集め分析した。私の班はカラマツの植生について調査し、光合成による炭素吸収能力の年間比較を行った。
1日〜2日でのフィールドワーク後は結果をスライドにまとめ12分間の発表を英語にて行うことで、他の班との情報交換となった。
学習成果について
永久凍土についてその形成、分布、性質、地形などについて幅広く学ぶことができた。永久凍土は北半球大陸の約20パーセントの大陸に広がり日本の一部の地域でも確認することができる。
今回訪れたヤクーツク地域は永久凍土の広がる地域であり、永久凍土の融解により建造物に歪みが生じてしまう現象を実際に確認することができた。永久凍土の建物やパイプラインについて講義内で議論する
場があった。永久凍土での建築物はそれらの排熱で永久凍土の融解を招き沈み込んでしまうため技術的に困難を伴う。融解を避けるための工夫も学んだ。永久凍土の特徴的な地形であるピンゴやアラス、氷楔についても学び、ピンゴの実際の地形を見ることができた。
また永久凍土の上層には夏の間溶けている活動層があり、酸性の土壌となりタイガや草原となっている。
つまり永久凍土の影響は植生にも反映しており、針葉樹林(特にカラマツ)や土壌を利用したミニリサーチで理解を深めることができた。
専門外の分野の学習であったが、地理の学習で学んだことを思い出しながら取り組んだ。新たな視点から物事を捉える力が向上したように感じる。
海外での経験について
講義やフィールドワークをわざわざ海外に赴き行うからには、日本ではできないことを経験し充実した時間を送ろうと考えていた。
もっとも力を入れたことは、国際交流である。今回は日本人の割合が多く、国際交流が難しいことが懸念された。積極的に他国からの参加者に話しかけ、行動を共にすることで国際交流の絶対時間を増やすように努めた。他国からの参加者はみな英語が堪能で様々な経歴をもっている方ばかりで、自分たちの経験談や意見を交換することが非常に楽しかった。
また、フィールドワークについては日本人3人に対してロシア人が1人という割合であったため、どうしても日本人特有のチームワークの進め方になってしまった。日本人は効率を求め分業して作業を進める
傾向がある。私の班もそのようにした。
しかし、まず目標や目的を明確にして全員がプロジェクト全体を把握するべきであるという考えがあることを後から聞き、チームワークの難しさと視点の違いがある面白さを感じた。
今後の進路への影響について
フィールドワークは初めての経験であったため、その面白さと大変さを同時に知ることができた。
研究に限らず、外部での調査の機会があれば、今回の経験を生かせるのではないかと思う。
日本人学生同士はもちろん、多国籍の学生らとこれまでの経歴や経験を聞く中でいろいろな生き方があることを改めて感じた。
他国の参加者のほとんどは大学卒業後そのまま大学院に進んでいる人はいなかった。それぞれが大学院までに働いていた経験をもっていたり家族がいたりと専門も環境も違う中で生きていることがわかり、非常に興味深かった。
日本の型だけにとらわれないで生きることができることは強みになると感じた。
また、教師陣も個性豊かで、海外で教鞭をとる先生方の講義を聞けたことは良かった。